†☆†


二十五日──

外に出ると、引っ越し用のトラックが止まっていた。

寒い空気がキンと、冷たい。

あたしの──いや、もう誰のものでもない家を見た。


さようなら。



「夏音、行くわよ」


お母さんがあたしを呼ぶ。


十弥とは、あのあとから話せていない。

そりゃ、そうだよね……

いきなり告白なんてされたら。

しかも、みんなの前で。

廊下でも言ったし。

だから、二回か。

モヤモヤを紛らわすため、携帯を開くと、別れのメールが何着か届いていた。

元気でね!とか、また会おうね。とか……

そこに、咲希のメールもあった。


ごめん。見送れない。また会おうね、お元気で


うん。

分かってた。

来れないこと、どこかで分かってたから。

咲希の事情もあるだろうしね?


十弥からのメールは────

なかった。

……分かってる。

単なる幼なじみってことだけだから。

十弥があたしのことを特別に思ってるなんて、ないから。

その現実から、逃げてたってことも。

全部、どこかで知ってたんだ。