「なんで……」


さっきとは打って変わり、十弥の悲しそうな声が聞こえた。


「言えなかった。言いたくなかったんだよ」

「え?」

「自分で認めたくなかったの。十弥ともう会えないってこと。京都だよ?よっぽどのことがないと、会えないでしょ?」

「ああ」


音が飛び交う、教室の中でも十弥の声ははっきりと聞こえる。

不思議だな。

さっき、いっぱい泣いたのに、また涙が出てきた。

そして、ずっと、ずっと、


「だって、ヤだもん。会えないなんてヤだもん。あたし、十弥と一緒に居たいんだもん。ずっと一緒に居たいんだよ。好きだから」


ため込んでいた想いが、

漏れるように、吐き出た。


教室が、シンと静まる。

音一つしない。

まるで、誰か寒いおやじギャグを言った時みたいに──

さっきの賑やかさが嘘みたいだ。