「おい、セト」


後ろから、とても不機嫌そうな声がした。


「引っ越すなんて、聞いてないんだけど」

「十弥……」


こんなに怒っている十弥、初めて見た。


「おい」

「ごめん」


腕を組み、眉間にしわを寄せる。

そんな十弥に、ごめん。としか言えなかった。


「なんで、言わなかったんだよ」

「無理だって、そんなの」


下を向いて、手をグーにし、力を入れる。

感情を必死に押し殺しながら、

泣くのを、怒鳴りそうなのを、

我慢しながら。