幸奈は弥生たちが教室から出て行くのを見た。
とうとうばれてしまった。誰を恨むでもない、自分がいけなかった。
すぐに言えばいいのに、関係が崩れることが怖かった。
「幸奈くん、帰りましょう」
美華子が教室に入ってきた。
女の子らしい淑やかな雰囲気、昔から好きだった。
「ああ」
「私、このカフェに行きたいのだけれど、いってくれますか?」
「あぁ、いいけど」
幸奈は立ち上がると、教室から出て行く。
でるときに、美華子の手をひいた。美華子は顔を赤くした。
すぐに赤くなるところが可愛かった。美華子を好きになるきっかけは、桜並木だった。
中学2年桜の下で必死に子猫を助けようとする美華子を見た。
『美華子、何してるんだよ』
『子猫が降りれなくなってしまって、私木登りも出来ないし…』
『俺がやる』
幸奈はそう言って、木に登り、子猫を抱えて降りた。
『ほら』
そう言って、子猫を預けると、美華子は優しい笑顔を見せた。
その笑顔が心に残って、離れなくなった。そして、1年想い続けた。
いつも、美華子は弥生に守られていた。美華子はモテる。
いつも誰かが美華子に告白する度、心が高鳴っていた。
中学2年生の冬、たまたま日直が一緒だったときに、告白をした。
なかなか美華子と2人になる機会はそれまで0に等しかったのだ。
『俺、美華子が好きだ。付き合ってくれる?』
美華子は驚いた顔をしていた。真っ赤になって、微笑んだ。
『弥生のことが好きだと思ってました』
『弥生は妹みたいなものだよ。好きなのは美華子だ』
『私で良いのなら…』
それからもう2年たつ、今までばれなかった方が不思議だ。
弥生はたぶん、気がつかないふりをしていただけかもしれない。
そうやって、自分たちに気をつかってくれたんだろう。
2人で街を歩き出した。
「今日、俺たちのことばれた」
幸奈はそう口を開いた。
「えっ…」
美華子が驚く。今まで言わなかったのだ、気まずくなってしまうはずだ。
美華子もそれを恐れていた。
これからどうすればいいのだろう?

