波音の回廊

 私も後に続いた。


 (足音を立てないで)


 小声で言われた。


 清廉は、いざと言う時私を守ろうとしているようで。


 私をかばいながら、前へと進んだ。


 その時だった。


 「!!」


 清廉が急に立ち止まったので、私はその背中にぶつかった。


 (どうしたの?)


 (静かに!)


 清廉は私の口を、手でふさいだ。


 「!?」


 突然のことで、私は動転したけれど。


 清廉の顔色が蒼白になっているのが、月の光に照らし出された。


 何があったのだろう。


 私は顔を、清廉の見ている方角に向けた。


 人影が見える。


 そこにいたのは……。


 (清明?)


 女との密会現場だった。


 その相手は……。


 (な、七重さん!?)


 私も衝撃を受けた。


 当主の後妻と、血の繋がらない義理の息子とが……不倫!?