波音の回廊

 ……。


 「258個目……」


 徐々に三百個目が近づいてきたものの。


 夏の夜とはいえ、寒さが身にしみてきた。


 でもあと42個、もうちょっと……。


 「瑠璃、おいで」


 「え」


 「寒いんだろう? こっちへおいで」


 「でも……」


 「私のそばにいれば、寒くはない」


 清廉が私を呼ぶ。


 「ではお言葉に甘えて……」


 そっと近づき、清廉の側に寄り添った。


 じわじわと体温が伝わってくる。


 「いつも一人だったけど、誰かが側にいるだけでこんなに暖かいものだなんて」


 清廉の手が私の頬に触れる。


 「そ、そうね。人間の体温は約36度前後で、湯温36度のちょっとぬるい温泉に入っているのと同じこと……」


 恥ずかしいので瞳を逸らして、話も逸らそうとした。


 「お前はたまに、意味不明なことを口にするな。やはり異国の女だからなんだろうか」


 私は異国の人間というより。


 生まれた時代が違う、未来の人間であるだけ。


 そう考えているうちに、自然と唇が重なった。


 それっきり流れ星を数えるのを忘れてしまった。