波音の回廊

 「清廉はまだ19歳でしょう?」


 私は反論した。


 「まだ二十歳にもならない身で、人生全ての意味を完結させようなんて早すぎるんじゃない?」


 「瑠璃」


 「人生を総括するのなんて、死ぬ時で十分じゃない? 生まれてきた意味なんて、これから先に新たに見つかるかもしれないんだし」


 「そう……なのかな」


 「じいをみなさい。清廉の三倍以上長く生きてるよね。その境地になってから、もう一度生まれてきた意味を考えばいいことだと思うけど」


 かなり強い口調で、私は清廉に告げた。


 慰め、いたわるよりも。


 奮い立たせたかったので。


 「……母上に叱られてるような気分だった」


 清廉の母は早くに亡くなっているし、当然叱られた体験などないはず。


 「でも何となく、目の前が明るくなった気がする。瑠璃、ありがとう」


 再び清廉に笑顔が戻った。


 この島に迫り来る危機も、何とか回避できればいいのだけど。