……その昔、沖合いには「水の城」と呼ばれ、栄えている島があった。


 京の都と太平洋側一帯の港、そして当時蝦夷地と呼ばれた北海道とを結ぶ交易ルートの一角として、非常に栄えていた。


 そこの支配者は代々島を守り、島は京の都をしのぐ繁栄を見せていた。


 ところが長きに渡った繁栄を人々は、当然のこととみなし。


 神への感謝の気持ちを、徐々に忘れるようになっていった。


 島の命運に終止符を打ったのは、最後の当主の息子。


 彼は稀代なる悪人で、邪心に取り付かれ、支配者の地位とさらなる富を狙い。


 「悪の大王が空から降ってきた」のを契機に、ついに本性を現し。


 父親、母親、兄を次々と殺し、ついには支配者の座を奪い取った。


 酒色に溺れ、日々政務も省みず。


 遂に神は、その悪行三昧をお怒りになり、島に大津波を遣わした。


 波はたちまちにして、島全体を包み込み。


 堕落した島民共々、邪悪な息子を葬り去った。


 島は、そのまま海の底へと消えていき。


 全てを見送った悪の大王は、笑いながら空の彼方へと去っていった……。