波音の回廊

 「力がある者が、支配者として相応しいとは限らないんじゃない?」


 戦国乱世ならまだしも。


 ここは軍事力ではなく、貿易の力で国家を支えている島。


 腕力のある者が勝つとは限らないはずなのに。


 「兄上はああ見えて、本当は面倒見のいい人なんだ。私の存在ゆえ、飼い殺しのような立場に置かれ、未来の展望を見い出せずにやさぐれてしまったんだ」


 「そんなこと、」


 「私なんか、生まれてこないほうがよかったのかも」


 孤独に満ちた目で、清廉はつぶやいた。


 「そんなこと言わないで。清廉には清廉のいいところがたくさんあるんだし」


 「慰めなら要らない」


 一方的に却下された。


 「私が存在しなければ、兄上が現当主の唯一の男子として、すんなり次期当主の座に就くことができたんだ。なのに私が生まれてきたばっかりに……」