波音の回廊

 「父上は内心、私より兄上を評価している」


 「え……


 「兄上は良くも悪くも、統率力というか仕える者を引っ張っていける度量がある」


 「そう……かな? やりたい放題に見えるけど」


 私に対しても、あんなストレートに言葉をぶつけてきたり、言い寄って来たりする。


 きっと誰に対してもだろう。


 「だけど人々の上に立つ者には、あれくらいの強引さが必要なんだ。そして武芸にも秀でている」


 清廉も、次期当主としての教育の一環として。


 人並み以上に剣や武術は学んできたらしい。


 とはいえ体格差もあり、清明には及ばないと聞く。


 「どちらかといえば私は、一人で部屋で本でも読んでいるほうが好きだし。統率者には向いていないんだ。それを父上も知っていて……」