波音の回廊

 物心が付き。


 周囲の事情が分かるようになってくるに連れて。


 二人は、相互の置かれた状況を理解した。


 やがて二人の人生は、明確に異なっていく。


 清廉は「若様」として、次期当主たる教育を受け。


 兄である清明は、若様に万が一のことがあった時の「スペア」(代用品)として、いわば飼い殺し。


 兄弟であるはずなのに、全く違った人生。


 「兄上との関係が決定的にギクシャクし始めたのは、父上があの女を娶ってからだった」


 それまでは当主は、微妙な関係にある息子たちに気を配り、争いが起きないよう注意していたらしい。


 清明の母である側室が存命の内は、間に入って取り持ってくれて、兄弟仲は良好なままだった。


 しかし当主が側室の死後、若い女を後妻に迎えると。


 そちらに夢中になり、息子たちのゴタゴタには目をつぶるようになっていった。