悪の大王。


 みつ子さんが話してくれた、水城島滅亡に関わる伝承。


 それには悪の大王なる存在も述べられていた。


 悪の大王が空から降ってくる……云々。


 その時は、ノストラダムスの預言の模倣か? とふと感じたのだけど。


 今七重は、確かに「悪の大王」と口走った。


 私が悪の大王の手先だと。


 「失礼します」


 再度清廉は七重の言葉を無視して歩き始めた。


 私も無言でそれに続いた。


 「……」


 七飯の元から離れ、清廉の館が目前に迫った時。


 「ねえ清廉」


 私は思い切って尋ねた。


 「何か?」


 「さっき七重さまが口にした、悪の大王って何のこと?」