「こんなに怯えさせて……。もうおやめください」


 清廉は震えている私を背後に追いやり、清明に直面した。


 「何だよ清廉。お前もこの女が欲しいのかよ」


 清明は清廉を試すように、じっと見つめた。


 「そういう問題ではありません」


 清廉は表情を変えることなく、きっぱりと答えた。


 「言っとくけどな、俺が無理強いしたわけじゃないぜ。誘ってきたのはそいつの方だ。狩場で俺を待ち伏せして、誘惑した挙句……馬上では抱きついてきやがった」


 「な……! いい加減なこと言わないでください!」


 私は顔を赤くして全否定した。


 「この娘が兄上を誘惑したならば、こんなに怯えているはずないでしょう?」


 清廉は状況を判ってくれたようで、ほっとした。