……。


 ザザーン。


 ザーン……。


 あの日から何も変わらない波音。


 大学生になった私は、また夏休みにこの町を訪れた。


 大学では史学部の、地域の歴史を学べるコースを選択した。


 卒業論文には、是非伝説の水城島のことを調べて書きたい。


 そのためにも、なるべく多くこの町を訪れて。


 今に伝わる言い伝えを、地元の人から聞いたり教えてもらったりして集めていきたい。


 そして……水城島の謎を一つ一つ解き明かしてみたい。


 「その津波って、本当に神罰だったんだろうか。島ひとつ消えるくらいの大津波なら、他の地域にも被害出てるはずだよな」


 ……隣の清春が、私に話しかける。


 清春もまた、夏休みの度にこの町を訪れるようになった。


 示し合わせるでもなく。


 そして時間のある時は、こうやって一日中海を眺めていても、退屈しなかった。


 沖合いに、水城島が存在したであろうあたりを。