波音の回廊

 「清明のことも理由の一つだ。あいつは長男で、支配者としての素質もあった。だが母親の身分の低さゆえ、次期当主の地位は望めず……」


 「私がもっとしっかりしていれば、兄上にもそんな野心を抱かせることもなかったのです。全ては私の責任です。私が至らぬゆえ」


 「清明の不満を抑えるためには、お前が何一つ不足のない、強い当主になってもらう必要があった。それゆえ私はお前に誰より厳しく接してしまった。お前はそんな私が理解できず、恨んだことだろう」


 「父上の思いを理解できず、私は反発してばかりで……」


 清廉の瞳からその時、涙がこぼれた。


 涙は当主の手に落ちた。


 「急激に……目の前が暗くなってきた……。もう……喋ることも……困難、に……」


 「父上!」