波音の回廊

 「いつ見ても、お前は亡き人にそっくりだ」


 寝床に横たわったまま、当主は両手で清廉の両頬に触れた。


 「お前が成長してくるにつれて、ますます亡き人の面影が蘇ってきて、私は心苦しかった。つらかった」


 亡き人、すなわち清廉の生みの母。


 わずか15で当主の元へと嫁ぎ、清廉を生んで早くに亡くなったという。


 当主の最愛の人。


 「忘れようとしても忘れられず、お前を見るたびに思い出が募って苦しくて……手近な女で悲しみを紛らわそうとしてしまった」


 「父上……」


 「そしてお前は亡き人に似て体が弱く、心が優しすぎる面もあった。優しいだけでは、支配者としてやっていけないと思って、ついお前に厳しくあたってしまった」


 「……」