波音の回廊

 「やめて!」


 私は、清廉はきっとそこに居ると予期し、当主の部屋の扉を開き、中へと飛び込んだ。


 「だめっ!」


 そして言葉を失った。


 ちょうど清廉が、七重に斬りつけている瞬間だった。


 「清廉……」


 私が声を出すより先に、清廉は七重を斬っていた。


 「……」


 悪女から流れる血の色は、私たちと同じ色だった。


 かなりの出血。


 致命傷となるには十分だった。


 「ばかね。ようやく望み通りの世の中になるというのに……。強い者は生き残り、弱い者は朽ち果てるのみ……」


 清廉にすがりついた後。


 七重の体は、崩れるように床へと落ちていった。


 その後には底知れぬ沈黙。