波音の回廊

 「……!」


 まさに言われた通りだった。


 医師団が席を外したちょっとの間に、当主は病状が急変、死去…というシナリオだった。


 病死に見せかけて窒息死させるつもりで、七重は関係者を全てこの寝室から遠ざけていた。


 だから今になって助けを呼ぼうとも、その声は誰にも届かない。


 「せ、清廉……」


 生き延びるためには、今ここで清廉に命乞いをするしかない。


 七重は方針を一気に転換した。


 「京の都ではね……。もはや将軍の権威は失墜し、地方の守護大名たちが自立の道を歩んでいるのよ」


 だが清廉の耳には、七重の声など届かない。


 届いたところで、それは何の意味をも持たない。