波音の回廊

 ……。


 「このまま殿の意識が戻らなくても、親を殺したような息子が家を継ぐことを、海の神はきっとお許しにならないわ……」


 その時空は、いっそう暗くなっていった。


 昼前なのに薄暗い東の空には、光度を増したハレー彗星が姿を現した。


 「恐怖の大王が! 昼間なのに……」


 人々は恐れおののき、屋敷の中に閉じこもっていた。


 「七重。お前のためにこの俺が、水城家の家督を相続してみせる」


 「清明……」


 「心配するな。俺がこの家もお前も守ってみせるから」


 「約束よ」


 二人は庭園の片隅で、口づけを交わした。


 不吉なほうき星の輝く空の下で。