波音の回廊

 「この前は飲みすぎてひどい目に遭ったから、今日は控え目にしよう」


 蝦夷名産の酒は、どぶろくみたいなものだった。


 かなり濃いので、私も少ししか飲まなかった。


 「清明に、あの話はしたの?」


 「いや。問題は沈静化したので、変に蒸し返したくないのもある。しばらく様子見しようと思うんだ」


 「そう……」


 でっち上げを繰り返すと、いずれ嘘が発覚する可能性も増える。


 さすがに狂言だったことが判明すれば、当主も七重をそのままにはしておけないだろうし。


 七重もしばらくはおとなしくしているかもしれない。


 ……私たちはそう予測して油断していた。