波音の回廊

 「えっ、どうして?」


 「当主、そして次期当主となる者は、この島から離れるわけにはいかないから。当主はこの島を護る力を、生まれながらに備えているとみなされているんだ」


 「そうなの……」


 今の世だったら、後継ぎ息子を海外に留学させたりして。


 見聞を積ませて鍛えようとするのとは、対照的だった。


 「だから私は、清明が羨ましい。外の世界をあちこち旅することができて」


 清明は清廉を妬み。


 清廉は清明を羨望していた。


 兄弟で互いに、ないものねだりをしていた。


 その時。


 沈みゆく夕日を背に、鳥が一羽視界を横切った。


 高い空を舞っている。


 カモメだ。


 海から離れた場所に、迷い込んできたのだろうか。