波音の回廊

 ……。


 清廉の館の西側の窓からは、海が見える。


 その海は、おそらく太平洋。


 北緯40度よりもちょっと南に位置すると思われる、この水城島。


 西の水平線の向こうは、東北地方だろうか。


 だけど遠すぎて、本州の島影が目に入ることはないらしい。


 「今、清明が出かけている蝦夷地も、遠すぎてほとんど見えないな。たまに天候の良い晴れた日に、ぼんやりと北の水平線の向こうに浮かび上がるらしいけど」


 「蝦夷地って、どんなところなの?」


 「巨大な島らしい。人々が住むのは、海岸線と川に沿ったわずかな部落のみで、その奥には果てしない森林が広がっているらしい」


 現在は札幌など大都市が点在し、「北海道」と呼ばれる大地も。


 この当時は原始林が広がる、人をも寄せ付けぬ地だったようだ。


 「清廉は、行ったことがないの?」


 「私は生まれた時から、この島から出ることが許されていない」」