波音の回廊

 「清廉。清明に相談したほうがいいのでは?」


 「兄上はだめだ!」


 「でもこのままなら、濡れ衣を着せられたままじゃない? あんな清明でも、誠心誠意心を開いて向き合えば……」


 「兄上を困らせたくない。それに兄上は今、蝦夷地(北海道)に行っている」


 「蝦夷地?」


 「秋の収穫時期の前に、物々交換の条件を確認するための事前交渉だ。帰りは早くても数日後だ」


 こんな時に……。


 タイミングが悪かった。


 清廉が七重を襲ったなど、心底信じている人が何人いるのかは疑問。


 清廉を信じているじいだって、「どうして相手に付け込まれるような、軽率な行動に出たのですか?」と。


 清廉は七重に陥れられたことを悟っている。


 日頃の清廉の振る舞いからして、暴行目的で七重の部屋に乱入したなどと信じ込んでいる人は、果たして何人いるのか。


 だけど。


 無実を証明する手立てがない……。


 こういうのを「悪魔の証明」と言うらしい。