波音の回廊

 「兄上の名前は出せないし、何より証拠がない。私の言葉だけでは、父上に真実は伝わらない」


 証拠。


 ビデオカメラを持って来ればよかった。


 私は心底思った。


 父が新しい物好きで、最新式のビデオカメラを昨年購入していた。


 あれがあれば……、清明と七重の密会現場を撮影して、プレビュー画面でその場で再生できたのに!


 でもどうすることもできない。


 私があれこれ考えている間も、清廉は黙って酒を飲み続けていた。


 「瑠璃は飲まないのか?」


 不意に尋ねられた。


 「あ、私は未成年だからまだ……」


 「未成年って何だ?」


 「私の世界では、二十歳以下は成年に未だ達していないとみなされ、お酒は飲めないし、保護者の監督下に置かれているの」