波音の回廊

 その日の晩。


 昼間、裏山での薬草摘みに侍女たちと出かけていた七重は。


 夕方には館に戻り、夕食前に入浴を済ませ、自室に戻り侍女たちに濡れた髪を乾かさせていた。


 「髪飾りはどうなさいますか」


 「今日は殿は、夜遅くまで重臣たちと相談があるんですって。夕食も別だし、髪は今晩は適当でいいわ」


 「かしこまりました」


 侍女は七重の豊かな髪を櫛でとかし、整えた。


 七重は椅子に座ったまま、鏡台に映った自分の美貌を確かめていた。


 その時、部屋の扉を叩く音が。


 「……こんな時間に、誰でしょうね」


 侍女は櫛をすく手を止め、振り返る。


 扉が開いて、誰かが入ってきた。


 「清廉?」


 七重は鏡越しに、清廉が部屋に入ってきたのを確認した。