関係ない…。

そう思いながらも、

彼は苦々しげな舌打ちを
止められなかった。


このファイルケースは、
彼方の私物。


学校の下駄箱や、
教室の机…

個々の使用するスペースでありながら、

微妙に
プライベートのない物とは、根本的に違う。


個人的な所有物を、

自分の知らない間に他人に触られ、

かつ、中にまで手を入れられているという嫌悪感………。


性格はともかく、
『眉目秀麗』な保険医に
憧れる、

一部の無邪気な生徒達の
何気無い
行為だが、

短気な彼方を苛立たせるには十分だった。