「理恵の友だちは、私じゃない偽物の私」

「偽物って・・・春香ちゃんは春香ちゃんだろ」

「あなたって・・・つくづく偽善者」



私がそう言うと、悠斗はひどく傷ついた顔をする。



「・・・春香ちゃん。抱きしめてもいい?」

「は?」




次の瞬間、悠斗の温もりに包まれていた。
ふわっと香柔らかい匂い。
悠斗の、少しだけ早い鼓動。





「偽物なんて言うな。理恵が見てる春香ちゃんも、俺が今こうして抱きしめてる春香ちゃんも、同じ春香ちゃんだよ」

「・・・っ」

「ここに、いるんだ。ちゃんとここに」





抱きしめる力が強くなる。
横を通り過ぎる人たちがチラチラと見て過ぎていく。




「理恵だって、ちゃんと春香ちゃんの事見て、春香ちゃんと言葉を交わして、それで春香ちゃんの事が好きだって、友だちでいたいって思ってるから一緒にいるんだ。
自分をそうやって否定するなよ!」