「ごめん、悠斗・・・。大丈夫。きっと、気のせいだと思う」
―は?気のせいって、そんなわけ・・・
「大丈夫だから!」
そう言い切って電話を切る。
これ以上話していると私の不安がすべて伝わってしまいそうだから。
心配かけたくないし。
本当に気のせいかもしれないんだから。
早く家に帰ろう。
家に帰って鍵を閉めてしまえばきっと・・・。
でも、家がばれてしまうのは、まずいのかな?
だとしたら、どうしたらいいんだろう・・・。
怖い・・・。
怖くて、たまらない。
一気に走って逃げよう。
逃げきれないかもしれないけど。
一か八か。
私は意を決して走り出した。
ヒールではそこまで速くは走れない。
カツカツとヒールを鳴らしながら必死で走った。


