仕事が終わり、家に帰る途中。
携帯の着信音が鳴る。
ディスプレイに浮かぶ、悠斗という名前。
「もしもし」
―春香?終わった?
「うん。終わったよ。まだ起きてたの?」
もうすっかり日付は変わり真夜中。
いつもじゃないけど、悠斗は起きてこうして電話をくれる。
彼氏彼女って、こういう事なんだろうか。
「明日も仕事なんでしょう?」
―うん。でも、遅出だから
「そっか」
―春香今どこ歩いてるの?
「今?えっとね、繁華街は抜けたよ」
少しずつ明かりも少なくなって暗い道に入っていく。
こんな時に、悠斗の電話はとても心強い。
いつも、心細いから。
コツ・・・コツ・・・
ふと、後ろから聞こえる足音が気になった。


