床に落ちている包丁。
目の前で起きていることが、理解できない。
「春香っ!!!」
慌てて駆け寄り、身体を抱き起す。
ぐったりした春香は瞳を閉じたまま。
ぬるっとした感触に、現実なのだと突きつけられる。
「・・・血・・・血を・・・」
気が動転する。
震える手で春香の手首を押さえる。
血を止めなきゃ・・・。
泣き出しそうになりながら、目に映る赤に鼓動が早くなった。
どうしたらいいのかわからない。
電話、電話・・・。
片手で携帯電話を取り出し、テンパりながら操作をする。
どこにかけたらいいのか頭が回らないまま操作をしていると、どこかにつながったようだ。
コール音が響く。
しばらくのコール音の後、誰かと繋がった。


