「ママは結婚しないの?」
「ん~。そりゃあ、いい人がいたらねぇ。いつかはしたいわよ」
「俺なんてどう?稼いでくるよ~?」
「ふふふっ、なぁに?口説いてくれるの?」
楽しそうな客と江梨子さんの会話。
江梨子さんはこの仕事に向いているのだと思う。
私には、向いていない。
お金のこともあるし、いずれは接客の方の仕事もと思っているけど、私には無理だろう。
私は息を吐いた。
別に、特別苦しいわけじゃない。
毎月、母親がお金を振り込んでくれている。
最後、私を助けてくれた大っ嫌いだった母。
その母も、父とはやっと離婚したのだと江梨子さんから聞かされた。
だからってなんとも思わない。
もう一度母と暮らしたいとも思わない。
たった一度助けられただけ。
それまで、一度も助けてはくれなかったんだから。
私を見殺しにした。
その思いは消えない。


