彼は、優しい人だから。
私が健太と重ねて伸ばした手を、掴んでしまったんだ。




そして、放すことができなかったんだよね。






放せば、私が傷つくから。
私は、一人ぼっちだから。





彼は、優しいから。





でも、あと二日。
今日と明日で終わるから。



きっと、私が姿を消せば彼は彼女の元へ帰るだろう。




そうだ。
それでいいんだ。




彼女の涙も、止まればいい。





―あんたなんか、消えちゃえ!







消えるから。
もう少しだけ待って。
私のせいで起こったことの、懺悔だけは最後までさせてほしい。