「名前、なんていうの?」



「....紗奈」

私は少し間をあけて言った。

「紗奈は毎日散歩してるの?」

「はい」

(いきなり呼び捨てかこの人...!)

「じゃあこの道はあまり通らないわけだね」

「そう...ですよ、なんでわかったんですか?」

年上か同い年かわからない私は

少しとまどいつつ敬語を使った。
たぶん年下ではない。

「僕もいつもここに来てるからね」

「そうなんですか...あの、何歳ですか」

年上か同い年か

はっきりさせたかった私は

思いきって聞いてみた。

「17だよ」

(私より年上だ)

私は16だ

「私より1個上ですね」

「ほんと?でも敬語じゃなくていいよ
 僕、敬語で話されるの苦手なんだ」

学校では先輩、後輩関係があって

自然と敬語が染み付いてる私には

それがひっかかった、が

またあの少年の優しく、甘い声と表情に

コントロールされたかのように

「...わかった」

といってしまった。

そんな自分が恥ずかしくもどかしかった。