だいたい阿久津は私と違って、恋人がいないんじゃなくて作らないだけじゃないか。
まあまあ綺麗な顔立ちをしている彼は、その面倒な性格さえ改善すればそこそこモテそうなのに。
なぜ敢えて、私を誘ってこんなカップルのためだけにあるようなイベントに強引に参加しようとするのか。
街に繰り出てカップルをひたすら僻みまくるくらいなら、適当にでもなんでも、彼女をつくればいいのに。
「辻野、イルミネーションのコンセント、嚙み千切って来て」
――そしてそのリア充への細やかな嫌がらせは、次から次へとどうして思いつくのだろう。
「もー! 何!? お望みなら街中停電にでもしてあげようか!?」
半ばやけくそでまくしたてるけれど、至って冷静な阿久津はハンっと鼻で笑うだけだった。
「バカ言うなよ。辺り暗闇なのをいいことにあいつらが盛り出すぜ?」
「え?」
「大惨事がおっ始まるって言ってんの、あちこちでね。寒気がするよ」
「……え?」
「辻野にはわかんない話」
はーっとわざとらしく溜め息を吐いた阿久津は、微かに笑う。

