そして己の身を持って彼の作戦を止めた私は、全国のカップルに崇拝される対象にあると思う。
「どうしたの辻野、具合悪い?」
「あなたのせいでね」
「まさかラーメン2杯、スープまで飲み干すとはさすがのボクもびっくりですよ。女じゃないよね」
「どの口が言う……っ!」
だって一杯目のラーメン半分食べたあたりから、舌が麻痺したのか物凄く美味しく感じれてきたのだ。それに、量はそれほど多くなかったし。もともと辛いのは好きだし。
なんて心の中で言い訳を浮かべながら、結局また来たときの倍の時間をかけてのろのろと元の道を辿って待ち合わせ場所に戻ってきた。
その場は先ほどよりもたくさんのカップルで溢れ返っていて、その様子にうんざりな阿久津は目を細めて蔑むように、彼らを眺めている。
中学生くらいの男女が二人、どちらからともなく手を手を繋いでお互い顔を真っ赤にしている。初々しい様子が可愛くて、羨ましい。
「辻野、ちょっとあのカップルの男の方に『その女誰よ』ってヒステリックに叫んできてよ」
「最低か」
「世のカップルは俺を殺しにかかってきてると思う」
こんな日に出掛けようって言うからでしょ……!
非リア充はそれらしく、家で大人しくしてるべきなんだよ、こんな日は!

