……彼が何故不機嫌なのか、私にはさっぱりわからない。心当たりがまるでない。ような、あるような。
……要するに、もしかしてだけど、阿久津も私に下の名前で呼ばれたいということだろうか。
……いや、さすがにそれはないか。
あったとしても、拗ねるまでない。
「……阿久津くーん、機嫌直してー?」
仕方なく彼の寝転ぶベッドの端に座り、阿久津の腕を控えめに揺らしてみた。
なんだこれ面倒くさい。でも放っておけばもっと面倒なことになるのは目に見えてわかるので、長期戦覚悟だ。
「阿久津ー?」
「うっさい」
「こっち向いてよ」
「一応ボク病人なんですけども」
「だからイラついてるの!? ……あっ! 病原菌のしわざか……!」
ハッと気付いて、即座に阿久津から手を離した。
……原因が分かったところでしかし、菌相手には私にはどうすることもできない。だってすごく小さいし、目に見えないし。
私は医者志望でも薬剤師志望でもない、どころかバリバリの文系だから、やっぱり阿久津の役に立つことはできない。

