押し黙り目を瞑っていよいよ寝る体制に入った彼に対し、私は未だ挙動不審のまま。
「……辻野」
「えっ!?」
「お願いがあるんだけど」
「……お願い?」
不意に名前を呼ばれて、私の手を握る力が一層強まったのが分かった。
私の叶えられる範囲内でのお願いや頼みごとなんてたかが知れてる。
それでもこの状況で、一体私にどんな助けを請うというのか。
何故か緊張したまま首を傾げれば、ゆっくりとした動作で体を起こした阿久津は、私の手を離したと同時、私の後頭部にそのまま自分の手を回してきた。
「……うえっ!?」
「……」
「なに!?」
彼の顔の方に私の頭は引き寄せられ、しんどそうな阿久津の表情をドアップで見る。
――“ちゅーするから”?
先程聞いたセリフが脳裏を過り、軽い眩暈を覚えた。
いやいや私海斗さんにチクってませんけど……!?

