空いている方の手で、ぎこちなく阿久津のサラサラな髪の毛に指を通した。
そっと触れたつもりだったけれど、すぐに気付かれてしまう。
「……なに」
「い、や、別に……!」
「……痴女かよ」
「熱あること海斗さんに言おうか?」
「言ったらまじでちゅーするから」
「どっちが痴女!?」
「痴漢ね」
思わず叫んで、手を引っ込める。
ついでに彼の首に置かれたままの左手も回収しようとしたけれど、やはり病人とは思えない強い力に阻まれてそれは叶わなかった。
この強さ仮病を疑うレベル。
ほんとにいつまでこうしてるつもりですねん!
いい加減私耐えきれない。心臓が爆発する。
ていうか阿久津の私への触れ方がスマートというか慣れている感じで、今までそれなりに女の子と付き合ってきたのかなと思った。
別にだからといってどうすることもないけれど。
ただ、私だけがこんなに動揺してるのが、ほんの少し悔しいだけなのだ。
熱で錯乱しているのかは知らないけれど、すぐちゅーするぞとか言うし……!
おかしくなってるのはよく分かってるけど。いつもの阿久津じゃないことは分かってるけど!

