左手で顔を覆い低い声で呟いた青年の表情はわからない。
どうすることもできないけれど、申し訳なさと焦りで阿久津の頬にそっと触れた。
鎖骨ちょい下まである黒髪は、いつもは下ろしているのだけれど今日に限ってポニーテールにしてきたことを後悔する。
「ま、まじでごめん、わ、わざとじゃないよ……?」
「……」
依然として顔と顔との距離は近いままで、じっと私を睨みつける同級生の眼光に一瞬ひるんだ。
かと思えば、阿久津に触れていた右の手首を強い力で掴まれ、その頬から引き剥がされてしまう。
……う、うわあー。怒ってる……!
「……辻野さ」
「は、はいっ……!?」
「なんかもっと色々意識した方が良いと思うよ」
「いろいろっ……、あ、はい、そうしますっ……?」
なんだ色々って。
ハッと鼻で笑った彼は、私の手首を空中で離した。
あ、意外とあっさり解放してもらえた。よかった。

