そんな私の焦りなど阿久津は知らないのだろうが、平然とした顔でこちらへ向かってくる。
上から見下ろされれば見つかってしまうかも、と、明らかに不自然ではあるものの、右手で紙袋を引っ掴み腰のところで隠し立ち上がった。
勿論勘の良い同級生は私の明らかに挙動不審な態度に気付かないはずもなく。ていうか紙袋がガサッて音がしたし。怪訝な表情で眉を顰めた。
「辻野今、なんか隠した?」
「え? はは、まさか? 何も?」
引きつった笑みを浮かべて首を振った瞬間、ピンポン、と、短く音が響く。
――神からの救いの手だと思う。タイミングが良すぎて。
阿久津との距離がじりじりと縮まっていく最中、なんと運の良いことに家のチャイムが鳴り響いたのだ。
今日、この家には私たちの他に人はいない。
ピーンポーン、と、今度は間延びした音が1階の玄関から再び聞こえた。
「……出てくる」
「い、いってらっしゃーい」
少しわざとらしいくらいに手を振りながら笑顔で彼を見送れば、とんとん、と特に急ぐ風でもなく階段を一定のリズムで下りて行く音がする。

