その手首はすぐに掴まれて外されちゃったけど。恨みのこもった目で睨まれたけど。
……そこまで怒ることないのに。
「……ご、ごめんね? 嘘見破られたの、そんなに悔しかった……?」
「……」
「ごめんって!」
「……別にいいけど」
鼻で笑う阿久津は、面倒くさそうに眉を顰めて、ちらりと空を見上げた。
つられて私も顔を上げれば、相変わらずの真っ青なそれが果てしなくどこまででも広がっている。
雲がわたがしみたいに美味しそう。
なんて気を取られている隙に、一瞬で私の背に手を回していた阿久津に抱き寄せられた。
――うえっ!?
体が密着するほど強い力ではなかったけれど、
「辻野」
私の頭の上に顎を乗せた阿久津の声が、やけに妖艶な響きで、クラクラする。
彼の手は私の腰のあたりを抱いていたけれど、自分の手はどうすればいいのか分からずあたふたと宙に浮いたまま落ちつかない。