「――もー、そんなびっくりしなくてもいいのに! 嘘に決まってるじゃん!」
「……は?」
「してやったり。今日エイプリルフールだから、そんな風に言ったんだよね? さすがの私も今日は騙されないってー」
――阿久津が何故私にキスしたのか。
その本当の答えはきっと、やっぱり熱があったから正気じゃなかったっていう、単純な理由だったんだろう。
それをエイプリルフールだからって、私が好きだなんて嘘ついたりして。
最初は焦ったけれど、気付いたからには黙って騙されてる栄美ちゃんじゃないのよ。
逆にその告白を受け入れることで、阿久津を返り討ちにしちゃおう作戦。大成功。
そりゃあ、嘘で告白したつもりが受け入れられちゃったら、さすがの阿久津も驚くだろうよ。ざまあみやがれ。
しかし、冗談だとしても人に好意を伝えることが、こんなにも緊張するとは。
「……辻野まじで嫌だ」
「先に騙そうとした阿久津が悪い」
「マジ無理」
「お互いさまってやつ!」
えへっと笑って、拗ねたようにいる阿久津の髪の毛を撫でてあげた。
大分スカッとした。