正直、この笑顔の使い分けがくせ者よね。

咲良さんて美人だし、


「うっしゃー。じゃ。頑張るか!!」


……美人なのに、残念な性格してるよね。


黙っているだけでも華があるって言うか、存在感があるって言うか。

そう。
それは黙っていたらの話。

定時で上がっていく同僚たちを眺めて、それからふと視線を上げると倉坂さんと目があった。


「…………」


た、たまたま残業ですから!
いつも残業中ではないですから!

今回のはホラ。
間の悪い時に、うかつにも呟いちゃって、しかも、振り返ると言う失態をしてしまったと言うか。


……突き詰めて考えたら、残業のほとんどは、私の運の無さが原因なのかもしれない。


何だか残念なのは私か。

あまり悟りたくなかったなぁ。

この際、受け入れてしまおう。

そうすれば、新しい極致にたどりつける……


訳がないよね~。


なんかいいことないかなぁ。
何だか残業が増えると、潤いがないって言うか……。

同期の皆は女子会だとか、飲み会だとか、何だかいっつも楽しそうだし。

残業終わったら、何かをする時間なんてないものね。
仕事終わって、電車にゆられて自宅の最寄り駅で降りて、夕飯は差し入れですましちゃうか……たまにコンビニに寄ってみても、時計を見て何も買わずに終ったり。

マンションの鍵をあけて、すぐに着替えるのは部屋着ではなくてパジャマ代わりのTシャツにジャージだし。

クレンジグして、見る訳でもないテレビをつけて、友達からメールがきてたら返信して……

気がついたらスマホ握りしめながら、朝のアラームに起こされる。


……と、言うか、これって、女子の生活と言えるかな?