「ほれほれ、邪魔だ。用が済んだらさっさと寮に戻るなり、校内見学するなりしてこいっつーの」

「……」

「別にここでクヨクヨしてても良いんだぜ?可愛い可愛い中嶋君」



ムカつくー!人がヘコんでるって言うのに。こんな奴が教師でいいわけ!?



「寮に行きますっ!」

「ふふーん。ハンカチ貸してやろうと思ったのに、ああ残念。それじゃ、俺は職員室に戻るから」



勝手に戻りなさいよ!勝手に……って、あれ?苛立ったせいかな。気分がスッキリしてる。


廊下をぺたぺた歩いて行く先生を見て、私は少し感謝した。



「先生ー!!桜御先生ー!!」

「何だ?やっぱりハンカチいるのか?」

「いえ、職員室、そっちじゃないと思いますよー!」

「……」

「それじゃ、さよならー」



本当に方向音痴ね。

だけど、遠回りしても、いつか、お爺ちゃんと笑って話せる日が来ると良いな。

その時は茗も一緒に――。