「……」 「も、もしかして、朝、先輩が言ってた事、気にしてるわけ……?」 「……」 何とか離れようと、もがくものの掴まれた手の力は思った以上に強く、なかなか振りほどけない。 これが、茗を男として意識しなかった結果? だけど、どうして良いか分からない。 「茗、私達って……」 話かけようとした時だった――。 「開けるぞ」と、言葉と共に、開いたドアの前、立ちすくむ理玖の姿があった。 いつの間にか落としていた、ウサギのぬいぐるみが、私の足の下でフニャリと下敷きになっている。