俊先輩の視線から逃げようと、チョイチョイと髪を直していると、痺れを切らした様子の女が先輩に声を掛けた。
「俊ー。この子達、友達ー?」
「ああ、俺の弟と、弟の友達」
「ふーん」
どうやら、私達に興味はないらしく、早く話を終わらせたい、という模様だ。
「ねえ、映画、始まっちゃうよ?」
「ああ、そうだな。悪いけど俺ら行くわ。またな。妹の方も美夜ちゃんによろしく」
「さよなら」
良かった、怪しまれてないよね。
ホッとした私は、チラリと後ろを振り返った。
すると、甘えた様に拗ねた顔をした女が、俊先輩の手を繋いでいるのが見えた。
微かに二人の話し声が聞こえる。
「もう、早く行こうよー」
「まだ余裕あるから大丈夫だろ」
「けどさー。って、俊。また、こっちの手?俊は左利きでしょ?どうして左手繋ぐのよ。動き辛いんじゃん?私、逆で良いって言ってるのに――」
「良いから気にすんなって」
そんな会話が聞こえたのか、恭平が思わぬ事を口にした。

