「どうして、茗の奴があの時あんな事言ったのか、やっぱり今でも分かんねえけど、こうして降る雨を見てると、つい考えるんだよな……」 「……」 「あの時のアイツ、泣いてる様に見えたから――」 「恭平…」 「まあ、でも、ちょっとスッキリしたわ。悪かったな。変な話して」 そう言って、またいつもの笑顔に戻った恭平は、結局、一口も飲まなかったコーヒーを私の手に返してくれた。 雨は少し止みつつある。 ただ、私の心には、今までとは違う風が激しく吹き荒れていた。