佑…ゆう…
暗い夜道の中、手探りでポケットの中を荒らす。
手に取ったのは、携帯。
光の速度である番号を打つ。
………出て…出て…………でて!
3コールくらいなったあと、聞きなれた声が電話越しから聞こえてきた。
「はい、もしもし?」
『ん…佑ぅ……』
電話の相手は、佑。
私は、どうしても今、佑の声が聞きたかった。
『佑…佑……わたし…』
「どうした…?泣いてるのか?」
佑は、私の変化にすぐ気付いてくれた。
…ワタシ、ケガレタノ。
なんて、言えないよ…
でも、でも、私…こんなカラダで佑に触れられない…
今までずっと、佑だけだったのに…
思い詰めた私の口から出た言葉は、自分でも驚くような最悪な言葉だった。
『佑…別れよう』
「は?」
電話を目の前に話す私も、それを電話越しで聞いていた佑も、この4文字に驚いていた。
『あ……ごめ…そのっ…』
ーーーーーーーブチっ。ツーツー…
私が慌てて前言撤回を求んだとき。
電話からは、聞きたい声ではなく、ただ、通話終了を知らせる冷たい機械音だけが響いて聞こえてきた。
…佑…なんで?私が別れようなんて言ったから?
私が汚れたから?
助けて欲しいの、でも、あなたを傷つけたくなかったから…
でも、私…欲深いから…今更またあなたを求めてるよ。
『ゆ…ゆっ…うぅ…佑ぅ…』
あふれる涙は、終わりを知らない。
街灯の少ないこの道は、近くの家の電気だけが薄々と照っていた。
その電気さえも、私の視界はボヤけたフィルターをかける。
涙は、視界をぐちゃぐちゃに滲ませた。
お家が密集しているこの辺で、しかも夜に一人で声をあげて泣ける訳がない。
流れてくる涙の分大声で泣きたかった。
けど、けど。何度も声を殺して泣いた。