「あの子、ほんっとおもしろいなー!」

ハルトは先程の百合との会話を思い出し、目尻を下げて笑っている


『笑い事じゃないわよ…。危うく王子様の服、着せられるとこだったわ』

短期間で作った割にはなかなかの仕上がりだった服を思い出し、百合の器用さを再確認したがさすがに友達とは言えイベントに行くわけでもなくましてや学校であの服を着る勇気はないので丁重にお断りした

残念がっていたが、いつかは着てもらえる服を作ると妙な挑戦心に火を点けてしまった

「まぁまぁ。毎日飽きなくていいじゃん?」

ズボンのポケットに両手を入れ、ふわふわ浮きながらこちらを楽しそうに見るハルトに、そうだけど…とため息をついて返した


ガラガラっと教室に入り、自分の席につく


百合は一緒にご飯を食べた後、足早に委員会の集まりへ向かった

教室を見るとまだ帰って来ていない様子だった

彼女は体育委員をしている

きっと委員会の議題は、数週間後に控えた体育祭のことだろうと思い自然とまたため息が出てしまう


その時チャイムが鳴り、担任が少し遅れて入って来た

その後ろを束になったプリントを持って入って来る百合がいた


「座れー、LHRの時間だぞー」と言う担任の声にみんな話しながら席につく


「今日のこの時間は再来週に控えた体育祭の参加種目を決めるぞー」


イェーイ!と喜ぶ声やえぇーっと落胆の声が聞こえる

茉莉花はどちらかと言うと沈んだ気持ちになる。何故なら運動は得意ではないからだ

ただ、毎年種目を決める時は立候補形式で同じ種目を選んだ場合はジャンケンだった

茉莉花は綱引きや玉入れなどの団体競技を立候補することが多かったので、今まで個人競技に出ずになんとかその場を凌いで来た

今回もその手法でいこうと心に決めていた

が、それは体育委員の一言でなし崩されることとなる


「委員会で協議した結果、今年は立候補形式では無く、全校生徒あみだくじで参加する競技を決めることになりましたー!なのでみなさん恨みっこなしですよー!」

可愛い笑顔でそう言う百合に男子は、はーい!と返事がいい

女子はほぼ机に項垂れていた

茉莉花も泣きたい気持ちだった


「今年の競技種目はこんな感じでーす!」と大きな紙に種目が書かれ、名前を記入出来るように名目の横に空欄がある


みんな席から立ち、毎年変わる競技種目を見ていた

「では、あみだくじを引く順番を決めるのでみなさん立ってくださーい!私とジャンケンして勝った方からでーす!」


そう言ってみんな立ち上がり片腕をあげて戦闘体制になった