策に落ち度は無かったはずである。
サークルへの参加人数も、当初の予定通りに増加していた。

掲示板上での参加者とのやり取りも、マメにやっていた。
言葉のチョイスにも細心の注意を払っていた。
誰にも不快な思いはさせていないはず。

サークル運営者として、確かに手応えは感じていた。
しかしどうして、私の中の根拠のない自信は、粉々に砕かれた。

オフ会参加希望者、1名。

これは想定外だった。
参加者達への地道な根回しを重ね、5人は固いと踏んでいた。

その後の策も、5人以上を想定して練っていた。

しかし実際、蓋を開けてみれば、参加表明をしたのは1名だけ。

自分自身の認識が甘かったと言わざるを得ない。

人見知りを舐めていた。

私自身、初対面の人間を警戒こそするが、人見知りはあまりしない。
こと遊びとなれば、人見知りよりも、ワクワクが先に来るタイプであると自負している。

世の人見知りがこれほど深刻だったとは。

しかしこれは大変まずい。

一人でも参加者がいる以上、中止にするわけにはいかない。
ここで止めてしまえば、きっと後に響くだろう。
最初のオフ会で躓くわけにはいかない。

私の策では、この初回は後への布石だった。
参加者達からの口コミ効果に期待していたのだ。
一人では効果が薄い。

日程ギリギリまで、参加者を募り続けるも、増える事はなかった。
苦肉の策として、私が行ったのは、所謂ローラー作戦である。

年齢、性別、地域で検索をかけ、片っ端から足跡を残す。
どうと言う事はない、要するに手当たり次第である。

足跡が付いていれば、気になって相手を確認してしまうものだ。
自分のプロフィール画面に、サークルの事を目立つように書き込み、さらに足跡帳なるものを作成。

足跡帳とは、私のプロフィール画面を覗いた人、つまり足跡をつけた人が、簡単に挨拶を残すための簡易掲示板である。

足跡を付けた相手のページに足跡帳があれば、挨拶を書き込むのがマナー。
そんな暗黙のルールを利用したのだ。

今回、検索条件の中に、カラオケというワードを入れていた。
私が足跡を付けた人物は、プロフィール文の中に、カラオケという文字を含んでいる人物のみだ。

案の定、何人かからリアクションが帰ってきた。
しかし、サークルの事には誰も触れて来ない。
仕方ないので、リアクションのあった人物と、片っ端からコンタクトをとる。

最早、なり振り構っていられない。